日本株で最も有力な業績回復株は電力会社

現在の日本株で業績回復株と探すと、最も有力な投資対象は電力会社になります。

 

アメリカの電力会社で13倍のリターン

 

まず、投資を検討する上で、東京電力と地方電力会社への投資は分けて考える必要があります。

 

電力会社への投資を見極める上で重要な要素になってくるのは、「原発の再稼動」「電力自由化」の2つです。東京電力の場合は、さらに「原発による賠償金」「国有化リスク」を考える必要があります。

 

原発の再稼動

 

東日本大震災の影響で、すべての原子力発電所が停止しました。原発停止により、原発を持たない沖縄以外のすべての電力会社の経営と株価が低迷しました。

 

為替や資源高の影響を受けにくく、化石燃料よりも遥かに安価な原子力を使って儲けていたため、急激に財務状態が悪化しています。例えば、北海道電力の事故前の自己資本比率は、「20%」ほどありましたが、事故発生後は、「7.6%」と急激に資本が縮小しています。

 

現在は、各電力会社のコスト削減と原油価格の暴落によって徐々に業績を回復しつつあります。原発一基あたりで月に100億円前後の利益が見込まれると言われています。廃炉費用や再稼動に向けた設備投資などで、利益は圧迫されますが、それでも業績を回復させるためには十分な数値です。

 

ここで重要になってくるのは、原発停止は電力会社にとって長期的な問題ではなく、短期的な問題と考える必要があります。原発停止によって、短期的に業績は悪化していますが、原子力委員会の安全審査によって、徐々に再稼動していくからです。

 

2016年8月現在は3基が稼働、25基が審査中です。

 

稼働中
・九州電力の川内原発の1・2号機
・四国電力の伊方原発3号機

 

審査合格だけど停止中
・関西電力の高浜原発3・4号機

 

優先審査中
・東京電力の柏崎原発

 

事故から5年が経過し、原発を稼働しなくていいという安易な思考は、すでに少数派の意見になっています。

 

2016年に自民党が過半数の議席を獲得していますが、自民党は再稼動を前提に国のベース電源を算出しています。目標とする原発比率は20~22%ですが、これは現在の審査中の原発が再稼動した場合とほぼ一致します。


電力自由化

 

電力自由化が発表されてからは、電力会社に投資する上で悪材料としてとらえられていますが、実際にはこれは、良材料として考えるべきです。

 

電力会社は典型的な「地域独占企業」です。電気料金を政府が設定することによって、消費者は電気料金を安価で安定的に受ける恩恵を授かってきました。電力自由化により、電気料金の決定権は、電力会社がもつことになります。

 

資本主義社会において、圧倒的なシェアを誇る独占企業は、「価格決定者」になります。他の競争相手は、この独占企業が決定する価格に追随するしかありません。

 

建前上は、経済産業省は他業種からの参入を促したいので、各電力会社は他業種の参入を許すかもしれませんが、恐らくそれは限定的になるとみられます。

 

また、既存電力会社が他の電力会社の管轄へ、自由に参入できるようになりますが、これも限定的になると思っています。地方電力会社から見れば、お互いがそれぞれの地域の独占企業です、圧倒的な規模を誇る独占企業同士が、神経をすり減らして互いのエリアに侵入していくことは、非常に考えずらいです。

 

国が定めた制度上、うわべだけは競争しているようにふるまうかもしれませんが。

 

以上を考えると、電力自由化は電力会社にとって良材料として考えるべきです。価格を自由に設定する権利を国から無条件で得たことになります。

 

2016年現在、電力の契約切り替えをした消費者は、全国で「2%」にとどまっています。ポイント加算などで、サービスに付加価値を付けていますが、結局、電力の契約先を切り替えても、電気料金が変わらないことは、多くの消費者は気付いています。

 

朝日新聞
「電力契約切り替え147万件、全国の2% 4月自由化で」


東京電力に投資する場合

 

「原発再稼動」「電力自由化」を考えると、地方電力会社に投資することは極めてリスクが低く、リターンが高い投資だという事が言えます。廃炉費用や、原発再稼動における設備投資の費用はありますが、それでも株価は割安に放置されているからです。

 

電力会社は本来、安定的に収益を上げ、購入単価が高く、配当金も高く設定されているため、資産家に人気な銘柄です。その人気銘柄の配当を得る権利を、割安で購入することができます。

 

問題は東京電力への投資を割安と考えるか、それとも原発の賠償金を考えて割高と考えるかです。損賠賠償における総額は、7兆円にのぼると言われています。すべてを東京電力が負担するとは考えていませんが、これは無視できない程膨大な金額です。

 

国から支援を受けている東京電力が、突然債務超過するという事態はありえませんが、それでも、一度看板を立て替えて(100%減資)、株を清算し再出発するという可能性もなくはありません。

 

よって、東京電力に投資するかどうかは、その投資家のリスク許容度に依るところが大きいと考えます。

 

リスクを取ってでも大きく儲けたい投資家にとって、東京電力は最良の投資対象です。10年後にすべての問題を解決し、株価が回復したら「7~8倍」のリターンを得る可能性もあります。

 

出来る限りリスクを取りたくない投資家なら、東京電力以外の地方電力に投資するべきです。現在審査中の原発がすべて再稼動する頃には、「2~3倍」のリターンを手にする可能性が高いです。