原発再稼働から1年半経った九州電力の財務を検証、すでに震災前の3倍近く純利益を稼いでいる

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先日、ひさしぶりに電力会社の電気料金値上げがありました。そろそろ電力株が大きく動くのではないかと期待しています。

 

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5月電気料金 大幅値上げ | 2017/3/22(水) 18:19 - Yahoo!ニュース

 

電力会社の電気料金の値上げは電力株ホルダーにとって良いニュースです。売上高を押し上げる効果があるからです。

 

震災以降、すべての電力会社の原子力発電所が停止しました。九州電力は一番早く原発の再稼働に成功した電力会社です。

 

原発再稼働後にどれくらい財務を押し上げる効果があるのか確認してみました。

 

もともと九州電力は原発依存度が4割と、他の電力会社と比較して高かったです。この九州電力がいち早く原子力安全委員会の審査を合格したのは偶然ではありません。

 

九州電力には投資していませんが、この後原発再稼働が予定されている、東京電力や北海道電力にどのような変化が起きるかを予想することができます。

 

九州電力の過去10年の株価

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現在、九州電力の株価は1180円、予想PERは9倍のためまだまだ割安水準です。2008年の高値は3500円でしたが、経済危機の影響で30%下落し、そこから11年の震災で安値600円まで暴落しました。

 

川内原発が再稼働したことにより順調に株価が回復し、一時1700円まで上昇したのですが、賠償・廃炉費用が当初の見積もりの倍、20兆円という報道が流れたことにより今の株価まで下がりました。

→ こういう報道が流れるとついつい買いたくなってしまうのですが

 

震災前の1800円が適正価格だとすると、すでに66%程度回復し、残り33%は回復の余地があるといえそうです。

 

もしも600円の底値で拾っていたら、現在の株価は2倍です、震災前まで戻したら3倍株になります。直接事故を起こした東京電力はリスクの高い投資ですが、道連れとなった地方電力会社はついていなかったという他ありません。今回の事故で電力会社は運命共同体であることが鮮明になったといえます。

 

今年の2016年4月から電力自由化が始まりましたが、既存の電力会社が他の電力会社の領域に進出する可能性は極めて低いといえそうです。

 

地方電力会社に投資するのはアリかナシか?

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今の株価水準で地方電力会社に投資するかしないかは、意見の分かれるところです。事故が発生し、東京電力の暴落に連られて3分の1まで下がったときは、明らかに買いでしたが、ある程度株価が回復した現在は業績回復株としては少し物足りない、そこまで大きな旨味がないように思います。

 

震災前の元の水準まで戻しても33%だけの上昇です。そうはいっても、不確実性の高い個別銘柄で33%上昇することがある程度見込まれていると判断できるのなら、美味しい投資だといえます。

 

原発再稼働後も株価が重いのは、原発を持つ全電力会社が負担する賠償・廃炉費用が20兆円と見積もられているからです。

 

20兆円をどう見るかはそれぞれの判断になりますが、それほど重要ではないというのがわたしの見方です。むしろ、安全審査中の原発の再稼働、電力自由化、各電力会社のコスト削減など考えると、株価は震災前の水準よりも大きく回復していくだろうと予想しています。

 

電力自由化後も既存の電力会社が独占企業であることに変わりはありません。震災後に北海道電力後の一般家庭向けの電気料金値上げ率は24%と、他の電力会社を圧倒して高いのですが、これは本州を離れた島国であるため、参入障壁が圧倒的に高いことを表しています。

 

20兆円とはいっても、沖縄を抜かした全電力会社で負担した場合、いち電力会社あたり2兆2000億円です。電力を使用する世帯が多い、東京電力、関西電力、中部電力が多めに負担したとして、地方電力会社が負担するのは1兆円程度ではないでしょうか。

 

2015年度の九州電力の純利益は700億円ありましたが、そうすると14年程度で完済することができます。14年後も電力会社が衰退することがないと考えると、それなりに魅力的な投資になりそうです。

 

もともと電力会社は超優良企業、安定した配当金が魅力で資産家に根強い銘柄でした。現在はその電力株を格安で手にすることができます。現在は配当金を出す電力会社は少ないですが、5年後には元の配当金まで戻しているかもしれません。

 

電力会社はインフレに強い

 

電力会社に投資をする上で、もう一点重要なのはインフレに強いということです。

 

今後日本経済は急速にインフレが進みます、借金の実質負担額は減り、電力会社は簡単に電気料金に価格転嫁することができます。

 

たとえば九州電力の売上高は事故前は1兆4000億円でしたが、事故後は1兆8000億円、30%程度増加しています。これは原発が停止したことで電力コストが上昇したためですが、原発再稼動後に元の水準まで下げるかどうかは怪しいところです。

 

安全審査を合格するために設備投資をしたし、原発廃炉のためにお金が必要になります。電力を使用する消費者は、より安全な電気を求めることで一人あたりの電力負担額を増やしました。

 

九州電力の5年間の財務を確認すると

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2011年以降、売上高が大幅に上昇しています。これはすべての電力会社に言えることですが電気料金を大幅に上げたからです。一人あたりの負担額が増えれば、当然電力会社の売上高を押し上げます。

 

15年度は若干売上高が減少しています。これは2014年から15年で、世界の原油価格が3分の1まで大暴落した影響です。外的な要因で電力あたりのコストが下がりました。

 

注目すべきは事故発生から4年間は、営業利益、経常利益、純利益、すべて赤字でしたが、15年度にはすべて黒字に変換させていることです。

 

15年度の純利益は734億円です。これは震災前の2010年度の287億円よりもはるかに高くし、2005年度以来の高値となります。2005年の株価は3500円以上ありました。

 

つまり、純利益だけみるととっくに震災前の水準に回復したといえます。

 

川内原発2機が再稼働したとはいえ、電源は震災前の3分の1程度です。じつは原発が再稼働したことよりも、利益を押し上げたのは他に要因があります。

 

コスト削減もいくらか貢献しているかもしれませんが、大きな理由は原油価格が3分の1まで暴落しましたが、その分電気料金を安くしていないからです。

 

たとえば、原油価格が下がったことで東京電力は売上高を10%以上下げていますが、九州電力はほぼ変わりません。財務を安定させるために、電気料金を下げなかったことが理由です。

 

原発停止後に資源価格が暴落したのは、まさに電力会社にとって神風のようなものでした。

 

原発再稼働が財務に与える影響は?

 

九州電力が抱える原子力発電所は以下のとおりです。

 

川内原子力発電所、1号機、89万kw、2015年8月11日再稼働

川内原子力発電所、2号機、89万kw、2015年10月15日再稼働

玄海原子力発電所、1号機、55万kw、廃炉

玄海原子力発電所、2号機、55万kw、定期点検中

玄海原子力発電所、3号機、118万kw、審査合格し定期点検中

玄海原子力発電所、4号機、118万kw、審査合格し定期点検中

 

2016年度は割合でいうと、震災前の3分の1程度原子力の電源を取り戻していることになります。すでに審査を合格している玄海原子力の2機が動けば、2017年度の決算はさらに期待できるかもしれません。

 

今後、資源価格が再び上昇したとしても、ある程度原発が稼働してくれたらそのリスクを最小限に抑えることができます。とくに九州電力は震災前は、4割を原発に依存し、いち早く審査の合格と再稼働を果たしています。

 

その点で、他の電力会社よりも有利な立場にいます。

 

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