最近、電力会社の電気料金が久しぶりに大幅に値上がりしましたが、もうひとつ電力株ホルダーにとって良いニュースが流れました。
1年前、大阪の大津地裁によって差し止め処分を受けていた高浜原発が再稼働することになりました。運転差し止めの訴訟を起こしたのは滋賀県住民29人ですが、彼らの意向で原子力安全委員会の審査を合格した原発が停止させられるのかとびっくりしました。
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高浜原発 高裁が再稼働認める | 2017/3/28(火) 15:09 - Yahoo!ニュース
そろそろ本格的に電力株が値上がりしてくる頃ではないかと期待しています。
東京電力の柏崎刈羽原発も着々と適合審査が進んでいます。「重大事故への対処」や「地震・津波への対応」に沿った39項目の審査項目のうち36項目は審査が済んでいて、残すは3項目のみです。
各電力会社のPERとPBRを比較してみました。
株式用語PERとは
PER(株価収益率)とは、時価総額あたりの純利益のことを指します。一般的にPERが低ければ低いほど、会社が稼ぐ利益に対して株価が割安であるといえます。
たとえば、時価総額が10億円の会社が1億円の純利益を上げた場合には、その年のPERは10倍となります。これは投資した資金の会社までに10年掛かるという見方をすることもできます。
PERの倍率が低ければ低いほど、短い期間で投資額を回収できることになります。
一般的な目安として、PERが20倍以上なら割高、20倍以下なら割安と言われています。
日経平均は2017年3月現在は19000円で推移していますが、PERにすると15倍程度です。そのためやや割安であるといえます。
業績回復株の場合、他の外的要因によって利益をある程度維持したまま株価が大暴落するため、PERが高い傾向にあります。
たとえば東京電力のPERは4倍しかないし、エアバッグ問題を引き起こしたタカタのPERは2倍しかありません。
PERの数値だけをみて割安だからと飛びつくので危険です。東京電力の場合、決算書では見えてこない原発賠償・廃炉費用が20兆円と見積もられているし、タカタの場合は法的整理が噂されています。いくらPERが割安でも、法的整理が行われれば株券は紙切れになってしまいます。
これには注意が必要です。
株式用語PBRとは
銘柄を選択する場合にPERと同じくらいよく使われるのがPERです。
PBR(株価純資産倍率)とは、1株当たりの株主資本(純資産)を見て株価の割安性を測る指標になります。PBRの基準は1倍になります。PBRが1倍ということは、会社を清算(倒産)時の価格と現在の株価が一致していることになります。
純資産の割に株価が安ければ割安、純資産の割に株価が高ければ割高となります。
例えば、純資産400億円、発行済株式数5000万株の会社の場合、1株当たりの純資産は800円になります、ここで株価が1200円ならPBRは1.5倍となります。本来800円と評価されるはずの株価が1200円となるため、純資産を目安にした場合1200円は割高だと判断できます。
業績回復株に焦点をあてると東京電力の場合、純資産が高く比較的財務が安定していますが、震災事故で株価が安くなりました、そのためPERと同様にPBRは0.55と割安になっています。
タカタもPBRは0.32と割安です。タカタのエアバッグ費用は自動社メーカーが肩代わりしています。そのため株価が急落しても今のところタカタの財務に反映されていません。もしも、自動車メーカーがエアバッグ費用を請求した場合、タカタの自己資本では足りなくなるため1倍を優に超えてしまいます。
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PERとPBRについて整理したところで、各電力会社のPERを見てみます。
電力会社、PER、PBR、自己資本比率
北海電力、25.78、1.30、10.2%
東北電力、10.90、1.20、15.2%
東京電力、04.26、0.57、16.1%
北陸電力、35.57、0.71、21.5%
中部電力、09.96、0.72、28.9%
関西電力、12.95、0.97、15.9%
中国電力、118.61、0.77、20.4%
四国電力、29.80、0.87、19.7%
九州電力、09.52、1.53、10.1%
沖縄電力、18.53、0.72、35.9%
※2017年3月時点
PERから判断すると割安に放置されているのは、東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、九州電力になります。
PBRから判断すると割安に放置されているのは、東京電力、北陸電力、中部電力、中国電力、沖縄電力になります。
株価が割安か割高かを見る際には、純利益を指標にするPERと、純資産を指標にするPBRをどちらも考慮してみる必要があると一般的には言われています。
リスクの高い業績回復株に関しては、PBRも重要ですがそれ以上に自己資本比率もチェックする必要があります。一時的に業績が大きく落ち込んだ時に、資金繰りがない状態でもあと1年生き残れるのか、それともあと5年生き残られるかは大きな違いになります。
自己資本比率が多ければ多いほど長い期間生きられます。
自己資本が底を尽き債務超過に陥ってしまうと、企業に残されている道はほとんどありません。目下キャッシュを作るために主力事業を売却するにしても、売却先に足元を見られ安く買い叩かれてしまいます。
業績回復株において、セオリー通りでいくとPBRと自己資本比率は重要なんですが、電力株に関してはそれほど重要ではありません。
理由のひとつに、社会のインフラを支える電力会社が倒産することはあり得ないからです。東京電力の場合国有化のリスクがありましたが、その可能性も今となってはほぼなくなりました。
また、原発が停止したことで原発に依存している電力会社ほど財務が急激に圧迫しましたが、現在は原発が再稼働することが前提となっています。また、多くの電力会社は原発の再稼働を待つことなしに電気料金を値上げすることで赤字から脱却しました。
すでに財務状況は改善しているし、震災前の状態まで戻すのも時間の問題です。そのため電力会社には資産比率はあまり重要ではありません。
電力株を4つのカテゴリーにわける
わたしは電力株を4つのカテゴリーに分けています。
①リスクが高いけどリターンが大きい
東京電力株
②リスクが低いくリターンもそこそこ
関西電力株
北海道電力株
中部電力株
九州電力株
③リスクがないがリターンもあまりない
東北電力
北陸電力
中国電力
四国電力
④投資圏外
沖縄電力株
直接事故を起こした東京電力株はやはりリスクが高い投資です。国有化という可能性は高くはありませんが、損賠賠償・廃炉費用が20兆円と見積もられ、そのうちの東京電力の負担額は16兆円と言われています。
東京電力は年間で4000~5000億円程度割り当てることを目標としていますが、それでも32年という歳月を要します。PERが4倍と超割安水準でも株価が上がっていかないのは、こうした理由があるからです。
個人的な見解をいうと東京電力の投資はそれほど悪くはないと思っています。東京電力は原発を再稼働することなしにコスト削減だけで年間で4000億円程度の利益を出すようになりました。
今も赤字で苦しむ関西電力とは雲泥の差です。ここに原発再稼働分を上乗せするとさらに収益を大幅に改善します。16兆円という借金を抱えていますが、今後日本経済がインフレ化し円の価値が希薄化するため、時間が経つにつれ実質の借金額は下がります。
電力会社はインフレが起きても容易に価格に転嫁することができます。
リスクが低く積極的に投資したい電力会社
東京電力株よりもリスクが低く積極的に投資したい電力会社です。
これらの電力会社は原発依存率が高く、原発が停止したことによって大きく財務を悪化させた企業です。そのため株価はまだ完全に回復していません。
だいたい震災前の3割程度安値で放置されています。現在の政府の政策をみると原発再稼働はもうある程度織り込んでいます。
そのため現在は原発が運転していなかったとしても、徐々に原発が運転を再開しその過程で財務がより安定していくことになります。
震災以降停止していた配当金も徐々に復配を始めています。震災前の電力株の配当利回りは3%前後でしたが、この4つの電力会社の配当は1%以下、もしくは0%に放置されています。
配当金が復配を始めるなか、株価がより安値で放置されているため、リスクの少ない絶好の買い場になります。
中でも一番買いたい銘柄は九州電力です。九州電力は川内原発と玄海原発の2か所ともすでに原子力安全委員会の審査に合格し運転を開始しています。また、2016年の熊本地震で一時的に収益が悪化しました。
PERは9倍と東京電力株に次いで低いです。
リスクゼロだけどリターンもほぼゼロと投資対象外
これらの電力会社はもともと原発依存度が低く、すでに震災前の水準まで回復させてしまった銘柄です。配当もすでに震災前の水準まで戻しています。
沖縄電力の場合、原発を持たないため業績回復株とは無縁です。
2011年の事故発生直後であれば、不安心理だけでいくらか下がったので買いたい銘柄ですが、業績回復という点では旨味はありません。
業績回復という観点からは外れてしまうのですが、沖縄電力をはじめこれらの電力会社関連はできれば買いたいところです。
やはり配当金利回りが3%というのは大変魅力です。
配当性向の高い米国株では珍しいことではありませんが、日本株では数少ない貴重な存在です。
2011年の原発事故を経たことで、地方独占企業である電力株の強さを再認識しました。一時は地方電力株も3分の1程度まで株価を大きく下げましたが、電気料金を値上げすることで簡単に乗り切りました。
今後は原発再稼働によってさらに収益を改善していくため、悪いニュースがなかなか見当たりません。
原子力安全委員会の審査を合格することで安全性が高まりました。原子力損害賠償・廃炉等支援機構が設立されたことで、全電力会社で原発のリスクヘッジすることになりました。
現在のPERのように割安に放置されている電力会社は、やはり積極的に買いたいところです。
2016年度東京電力の決算
2016年度九州電力の決算