あまり先のことを予想してもしょうがないですが、長期投資家としては未来がどのようになっているのか予想図を描いておくことは大事なことです。
それによって長期投資家はスタンスが変わってきます。
10年後の日本市場はどのようになっているのでしょうか。10年後にも投資していたいと思える程世界的にも魅力溢れる市場になっているでしょうか?
きっとそんなことはないでしょう。
あまり楽観的にはみていません、むしろかなりネガティブに見ています。日本株は最低限の銘柄を残して、これ以上の投資は避けたいとまで考えています。
3年前に日本株の投資をはじめた頃には、こいういう風に考えるようになるとは想像もつきませんでした。日本に住んでいるから日本株では外国人投資家よりも有利だ、日本株に投資しようという程度の軽い感覚で始めました。
当時はアベノミクスで日経平均が2倍になり、まだまだ日本株も伸びると期待されていたころです。
アベノミクスの政策は賛否両論で、社会的にはまだまだ評価されているのかもしれません。少し早いですがわたしの中ではもう終わった政策です。
歴史にひも解くまでもなく、やはりリフレ派の主張は間違いだった結論付けています。
リフレ派:
政府・中央銀行が数パーセント程度の緩慢な物価上昇率をインフレターゲットとして意図的に定めるとともに、長期国債を発行して一定期間これを中央銀行が無制限に買い上げることで、通貨供給量を増加させて不況から抜け出すことが可能だとする主張。
- 借金のツケを払うのはすべて日本国民
- 10年後の日本政府のGDP比は320%突破
- 構造的な人口問題を抱える日本市場は成長できない
- 年金制度の改革
- 社会保障負担の増加
- 個人投資家が日本株で利益を上げるためには
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借金のツケを払うのはすべて日本国民
リフレ派の主張には、最初から無理がありますがやっぱり駄目だったという心境です。
まずは日本は外国(対外債務)からではなく自国(対内債務)で借金しているから大丈夫だといいます。お金が無くなれば新しく通貨を発行すれば良いと発言する政治家や経済評論家はたくさんいます。(本当にそう思っているかどうかは別として)
日本銀行が大量に国債を買い進めることによって、市場国債の40%を占めるようになりました。政府の借金も膨れ上がっています。
だからといって、日本は近い将来財政破綻(デフォルト)に陥るほど危険だ、ということが言いたいのではありません。今後50年間今のまま借金を膨らませたとしても、現実的にそうなるかならないかは怪しいものです。
デフォルトというのは、他国の金融機関などに日本政府が借金を返済できないことを宣言することを言います。個人における借金と自己破産の関係と同じで、最終的にデフォルトを宣言するかどうかは、返済するよりも自己破産した方が得だと、債務者が判断したときに行います。
現実的にそうなる前に紙幣の大量増発、富裕層への資産税の課税や、年金制度の廃止などやれることはたくさんあります。
ここで言いたいのは、日本政府が財政破綻するから日本円をすべて外貨に換えて準備しておきましょう、ということではありません。
「日本政府の借金が増え続けるということはそのツケは誰かが支払わないといけない」ということです。それは政府に税金を払う日本企業だったり日本国民になるのです。
消費税増税が延期されたことで喜んでいる方が多いかもしれませんが、財政ファイナンスを健全化する目標まで延期したわけではありません。この問題を先送りすればするほど日本の信用が落ち、国債価格の格下げや金利上昇の可能性が高まります。
お金はないところから突然発生しないため、消費税で取れない税金は他のところで取るだけの話です。消費税を上げられない場合は、大概所得税や社会保険料から取ります。
実は日本で働く多くのサラリーマンにとっては、消費税を上げてくれた方が生活が助かるとういのは皮肉な話です。
所得に加算される税は勤労者にだけ掛かる負担ですが、消費税は日本で暮らすすべての国民に平等に課す税金だからです。全国民で広く浅く取るのではなく、勤労者に多めに負担してもらうのです。
このように中央銀行が紙幣を増発し、日本政府が借金を増やせば増やすほど、わたしたちの生活は苦しくなってしまいます。債権者は日本国民だから何も問題がないというのは、政府にとって都合の良い言葉です。
10年後の日本政府のGDP比は320%突破
すでに周知の通り日本政府の借金はGDP比でいうと世界最大の借金大国です。アメリカは金額でいうと歴史上過去最大の債務国ですが、GDP比でいうと105%(11位)しかありません。
経済規模で比較したら日本の方がはるかに大きな借金を抱えていることになります。
数値はすべて世界経済ネタ帳を引用しています。
〇日本のGDP
1996年、511兆円
2006年、506兆円
2016年、504兆円
〇日本政府の債務
1996年、523兆円
2006年、942兆円
2016年、1264兆円
〇日本政府の債務GDP比
1996年、102%
2006年、186%
2016年、250%
過去20年間で日本のGDPは上昇していません、むしろ減少しています。資本主義社会は経済成長することを前提にしているため、長い歴史上これはかなり珍しい事です。
その間日本政府の債務は急上昇しています。直近10年よりも、バブル崩壊した後の10年の方が債務は膨らんでいます。これは90年代に景気を上向かせるために政府があらゆる手を使って対応したからです。しかし、実際にはいくら財政出動を増やしても景気を上向かせることができなかったのは、すでに周知の事実です。
GDPが成長しないまま債務だけは膨れ上がっているので、債務GDP比も物凄い勢いで上昇しています。これは第2位のギリシャを突き放して断トツの1位です。
ギリシャはあわやデフォルト寸前までいった国です。欧州連合が金融支援することでデフォルトとユーロ離脱をなんとか回避することができました。そしてこの出来事がイギリスのブレグジット(EU離脱)に繋がったと言われています。
日本政府は戦後に一度貯金封鎖を行ったことがあります。実はその時のGDP比は200%まで上昇していました。当時と今では状況が異なるので、そのまま当てはまることはできませんが、このGDP比250%というのは無視できる数値では決してありません。
よく日本は国内の借金が大量にあるけど、世界中にお金を貸している債権国でもあるといいます、しかし純債務残高のGDP比を示す数値でも、128%とギリシャに次ぐ世界第二位です。ユーロで深刻な危機が噂されているポルトガルやイタリアよりも高いのです。
もしも、このまま日本政府が今と同じように成長を続けた場合、10年後はどうなっているのでしょうか?そのまま過去20年間の延長線上に予想すると下記のようになります。
日本のGDP
500兆円
→GDPは大きく成長しない
日本政府の債務
1600兆円
→同じペースで増加を続ける
日本政府の債務GDP比
320%
→GDPが変わらないまま、債務だけが膨張
おそらく2位のギリシャ176%を大きく引き離すペースで日本の債務GDP比はさらに増加を続けます。
今後は、大量に通貨を発行した影響でインフレが進む可能性も非常に高いです。国債価格が暴落し金利が上昇すれば、急激にインフレが進みます。
インフレに合わせて円ベースでのGDPは成長するかもしれません、しかしドルベースで換算するとほぼ成長しないことが予想されます。
これは日本市場の根本的な問題を見れば明らかです。
構造的な人口問題を抱える日本市場は成長できない
これからも日本市場が成長しないだろうと考える一番の理由は、日本は構造的な人口問題を抱えているからです。
これはどうしようもない問題でもあります。日本は高齢者化率でも世界1位という座にあります。高齢化率とは総人口に対する65歳以上人口の比率のことを指します。
2015年世界の高齢者化率
1位、日本、26%
2位、イタリア、22%
3位、ギリシャ、21%
4位、ドイツ、21%
5位、ポルトガル、20%
人口もピークが過ぎた2010年あたりから、お金を稼ぎ消費を生み出す生産人口年齢の数は、急な階段を転げ落ちるように減少していきます。この生産人口年齢が減少し、高齢者が増え続けるという現象は日本経済に凄まじいインパクトを残す事でしょう。
わたしたち現役世代は増え続ける高齢者を支えていかなければなりません。
2015年、社会保障給付費は「115.2兆円」に上ります。この内訳は以下のようになります。
社会保障給付費の内訳
年金費用、約56兆円
医療費用、約37兆円
介護費用、約22兆円
生活保護者への税金ムダ使いがよくテレビで批判されていますが、彼らへの出費は3兆円程度なので、いくらここに労力を使って改善したとしても、社会保障費に比べるとたかが知れている問題です。
おそらく日本国民は移民を受け入れて人口を増やす事よりも、経済が縮小する方を選択しています。島国単一民族で育ったわたしたちは、他国の人種を受け入れるのはやはりハードルが高いようです。
移民を受け入れかどうかはこれも賛否両論あります。ヨーロッパやアメリカは移民を受け入れない方に力を入れ始めているので、難しい問題だとも思います。
日本社会はこれからも移民を受け入れるという選択肢は低いのかもしれません。
年金制度の改革
日本政府もこの状況にただ指をくわえて見ているわけではありません。
現在のアベノミクスによるインフレ誘導も、なんとしてもGDPを成長させなければならないという一貫でやっています。インフレ2%誘導はそまための政策です。
過去にも年金の改正など抜本的な対策をしています。税負担が膨らみ日本経済が成長しない一番大きい理由は人口問題なので、ここを直接イジルのが一番得策です。
例えば2000年の制度改正の時に、年金支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げました。2004年の小泉政権の時には、100年安心の年金制度のためにと訴え、受給額2割カットと保険料3割アップを決めました。
これでも日本社会では焼け石に水程度なので、現在65歳の受給開始年齢を引き上げる可能性があることも示唆しています。近い将来、段階的に75歳に引き上げられる可能性は非常に高いです。
オーストラリアなどではすでに検討を始めています。
年金受給が引き上げられサラリーマンの定年が75歳になった場合、男性の平均年齢は現在80歳のため、わずか5年しか年金を受け取る期間がないことになります。
60歳定年退職だった時代は平均寿命まで20年もあり、老後はどう過ごすかと心配する方もたくさんいたと思いますが、そんな心配はなくなってしまいそうです。
社会保障負担の増加
サラリーマンの給与が増えず税負担が上昇したことで、以前よりも生活が苦しくなっています。おそらくこの先の10年は今よりも苦しい時期を過ごすことになります。
サラリーマンが一番気にしているのは社会保障費の負担です。社会保障費の負担に比べれば所得税なんて小さい金額です。
社会保障負担率
1970年、5.4%
1980年、8.8%
1990年、10.6%
2000年、13.5%
2010年、16.3%
2016年、17.8%
現代を生きるサラリーマンは80年代の2倍、90年代の1.8倍もの社会保障費を負担しています。人口問題がさらに健在化していることを考えると、負担率は社会保障費だけで「25%」程度まで上昇してもおかしくはありません。
昨年の給与明細を確認すると、社会保障費で毎月4万円、冬の賞与で8万円支払っていました。経済のパイが縮小し税負担が上昇するなか、サラリーマンだけで収入を増やすのはどんどんハードルが高くなっています。
個人投資家が日本株で利益を上げるためには
こうした経済状況の中、個人投資家が日本株で利益を出そうと思うと中々難しいものがあります。インターネットで世界中の株が瞬時に買える時代に、日本株一本に絞るのは危険です。
ムダに守備範囲を増やす必要はないのですが日本株に絞って投資をしていると、優良株や成長株で長期で持ち続けるという、本来の投資の王道が使えなくなってしまいます。
注意深く企業を観察し優良銘柄を掘り出せるような優秀な投資家であればいいのかもしれませんが、そもそも絶対値として数が限られています。
日本株だけに限ってある程度利益を出そうと考えるのであれば、自然と以下3つに集約してしまうのではないでしょうか。
①ボロ株や低位株で大穴狙い
②業績が落ちた銘柄を買い上がるのを待つ
③インフレに強い銘柄を買う
わたしは過去3年これらすべてを実行しました。
低位株を一番最初に買いましたが儲からないと判断し1年後に売り払います。業績が落ちた銘柄を買う方法は、一部成功をしていますが失敗もしています。インフレ関連については継続中です。
このやり方でも間違っていないのかもしれませんが、リスクの割に効果はそれほど大きくないと考えています。
投資はギャンブルに走ったら負けてしまいます。①と②のやり方はギャンブルに近いものがあります。
投資の基本は適切な場所に適切なタイミングでお金を置くのが鉄則になります。そう考えると、そもそも日本株に絞って投資することが自体が、どうなのかな?ということになってしまいます。
そして、世界中の投資家はこの事実に気付いています。
日経平均は過去最高値の半値ですが、米国のダウ平均は過去最高値を記録しています。欧州も日本とそれほど状況は変わりはありません。日本と欧州の将来に悲観する投資家が増え、これらの国と比較してアメリカ市場は有望に見えています。
長期スタンスで投資に臨むのであれば、たとえ米国株が過去最高値だったとしても米国株に投資するのが正解かもしれません。
中国やインドなどの新興国ももしかしたら魅力なのかもしれませんが、リスクも高いため投資の王道からはどうしても外れてしまいます。
多くの日本人があてはまることですが、少なくとも日本円と日本株一本に資産を集中させるのだけは辞めて置いた方がいいということは間違いないです。