21世紀の最大の発明は人口知能(AI)になります。
人工知能は間違いなくわたしたちから多くの仕事を奪います。しかしながら、普段生活をしていると仕事が奪われるということに対してリアルに想像できている人は少ないのかなという印象を受けます。
すでに同じようなことはITの開発現場でも起きました。
例えば、インターネットが急速に発展したことで世界中のどこにいても、インターネットに繋がったパソコンがあれば、ソフトウェアやアプリの開発ができるようになりました。
日本人エンジニアに変わって日本市場に製品を開発する途上国のエンジニアは増えました。彼らは日本のエンジニア5分の1程度の給与で働いてくれます。
この間、途上国で働くエンジニアの給料は右肩上がりに上昇し、反対に日本のエンジニアの給料は右肩下がりに減少しました。開発拠点をアジアに設けることによって、日本企業は日本人エンジニアの採用数を減らしていきます。
間接的にアジアのエンジニアは日本のエンジニアの仕事を奪いました。グローバル社会では、同じ仕事の成果で人件費だけ数倍もらえるなんていう事がなくなります。他社と差別化するために仕事に付加価値を付け加えなくてはいけません。
エンジニアの仕事が間接的に減ったように、それと同じことが人口知能(AI)でも起きます。先進国から単純労働の多くを途上国の人々が奪いましたが、今度はそれを人工知能が奪うことになります。
もしも、こういう世界が現実に起きると思っていないのであれば、もう少しリアルに未来を予想した方がいいかもしれません。わたしはIT業界にいたこともあり、この変化をシビアにとらえています。
- 20世紀の最大の発明はインターネットだった
- 医療保険の仕事が人口知能に置き換わる
- プログラマーはレッドオーシャンに自ら飛び込むこと
- 市場価格の底辺で張り付く日本のエンジニアたち
- 中途半端に英語とプログラムを学ぶと貧乏になる?
- 人工知能に仕事が奪われても気付かない人たち
20世紀の最大の発明はインターネットだった
20世紀の最大の発明は間違いなくインターネットでした。インターネットは私たちの生活を大きく変えました。インターネットにさえ繋がってさえいれば、世界中どこにいても情報を入手することができます。事前に電車の時間を調べておく必要もなく、就職活動するときに、面接先にたどり着けない心配もありません。
日本でインターネットの普及が始まったのは1995年のことです。ドコモのiモードサービスが開始したのは1999年のことです。気付いたらわずか18年で携帯電話なしでは生きられなくなってしまいました。
そして、21世紀の最大の発明はおそらく人口知能(AI)になります。
人口知能に対してまだまだ遠い先の将来のことのように考えている人がたくさんいます。まさか自分の仕事がコンピュータによって奪われる日が来るのは、まだまだ数10年先のことだと考えている人も多いのではないでしょうか。
人口知能関連が本格的に活発になってくるのは2022年過ぎてからです。おそらく一度普及を始めたら猛スピードで拡散していきます。
すでにこの流れは着々と進みつつあります。
医療保険の仕事が人口知能に置き換わる
2016年、富国生命が「医療保険などの給付金を査定する部署の人員を3割近く削減した」というニュースが流れました。
34人人員を削減した代わりに、人口知能(AI)の導入を行っています。AI活用によって具体的な人員削減計画が発表されるのは珍しいことです。今後はこの取り組みに対しての成果が公表されていくことになります。
この人工知能に使われているのは、日本IBMのAI「ワトソン」です。このAIは、医師の診断書などから、病歴や入院期間、手術名といった情報から、給付金額の算出や契約内容に照らし合わせて特約を見つけ出すこともできます。
ここで気になるのは、AIを導入してどれだけコストが削減できるのかということです。
このコラムによると、AIのシステム導入に約2億円、保守管理に年1500万円程度の費用が掛かり、一方で34人の人員削減には年1.4億円と見られます。
つまり、システム導入時に多少の費用が発生するものの、2年も足らずにこの分を回収してしまいます。
10年後にはAIを活用した場合は3億5000万円、AIを活用しなかった場合は14億円、その差は10億5000万円にも及びます。
保険業界では支払い査定業務システムにワトソンを導入しているが、今回のように他の業務へもAIが浸透しています。
最初は導入に踏み切るのは限られた企業だけですが、ひとつでも成功すると加速度的に普及が広がっていきます。成功例をもとにIBMは他の保険業界に水平展開を仕掛けるからです。
先にAIを導入した保険会社は10年間で10億円ものコスト削減に成功するため、より良いサービスを安価で販売するようになります。そうすると他の保険会社も同じことをやらなくてはならない状況になります。
競争原理が効率的に働くとここで得をするのは、AIを提供する人工知能を開発する企業と、そのサービスを利用する利用者ということになります。ここでいう利用者とは保険会社ではなく、保険会社の顧客です。
保険会社に人手が必要でなくなった分、労働者である彼らは仕事を失います。その反面人口知能を活用することによって、資本家は儲かります。
どれだけ労働者が自分たちの権利を主張しようが、いらないと言われてしまえばどうしようもありません。
プログラマーはレッドオーシャンに自ら飛び込むこと
冒頭でも少し述べましたが、同じことはITの現場でもすでに起きています。
インターネット時代には世界中の国境の壁が低くなりました。これによって近隣の先進諸国と発展途上国との間で、同じ仕事ほど急激に格差が縮小しています。
とくにプログラムは世界共通の開発言語であるため、ソフトウェアやアプリを開発するエンジニアにはこの流れは謙虚です。
最近広告などで、これから先は英語とプログラムができれば一生職に困らない、世界中のどこに行っても働けるとありますが、これは真実ではありません。プログラマーは国境のない世界で働きます、他国と比較して人件費が極端に高い日本人プログラマーは非常に大きなハンディキャップがあります。
ライバルは人件費が日本の5分の1程度、世界中から集まる賢いプログラマーたちとガチンコで戦うことになります。この中でどれだけの日本人プログラマーが生き残れるでしょうか。
英語とプログラムを中途半端に学ぶことは、レッドオーシャンの海に自ら飛び込んでいくことになります。英語とプログラムができれば仕事に困らない、そのかわり給料はどこまでも暴落していきます。
プログラムの基礎知識が必要というのは否定はしませんが、それ以上に重要なのはビジネススキルやアイディアや創造性です。たとえ優れたアイディアがあったとしても、ITの世界では一瞬で模倣されるため、安定した利益を出すことは非常に難しいです。
市場価格の底辺で張り付く日本のエンジニアたち
ソフトウェアの開発は、理論上はパソコンがインターネットに繋がっていればどこにいても開発可能です。たとえ途上国に住んでいたとしても、日本のプロジェクト開発を支えるのは決して難しくありません。彼らにとって難しいのは日本の開発手法に合わせることと言葉の壁を越えることです。
自国のメーカーを相手に商売をしてもたいしてお金にならないのですが、日本メーカーと仕事をすると、彼らはなんとしてもこの壁を乗り越えてきます。
日本企業も彼らを使える側に回るか、それとも彼らを使えず国内プログラマーだけで切り売りするかで大きく待遇は違ってきます。
後社はわたしが2008年に入社した会社がそうです。資金力に乏しい、自社内の技術力も乏しく、エンジニアを中堅メーカーに派遣させることでなんとか生計を立てている中小企業です。
彼らがしているビジネスはマージン取りです。エンジニアを出向できる市場価格の底に張り付きます。そのため利益が出ない体質なのですが、その分人件費を削り続けるため、エンジニアの需要が上がらない限りはギリギリのところで潰れることはありません。常に出向させるエンジニアの単価が底に張り付くことになります。
現在在籍している会社は、うまく海外の開発拠点を利用して開発しています。20年近く前から海外に拠点を作ったということもあり、長く務める外国人スタッフは日本の働き方を熟知しています。
開発の規模が大きければ大きいほど利益が出やすい体質になります。日本人エンジニアが一人いれば、3~4人の外国人スタッフと一緒に仕事をします。
うまく海外の安い人件費を利用した方と、利用できなかった方では大きく差がついています。
前社は2008年以降右肩上がりで利益を出し続けています。最近は儲かりすぎて会社の役員たちは高級車に乗り換えていました。一方で後者の方はリーマンショック後もなかなか業績が上向かず賞与は出ないまま、長時間労働でも仕事がもらえるだけよくて、自宅待機を命じられることもあります。
後社の企業にわたしが在籍していたときのエンジニアの単価は40万を少し切るくらいでした。現在は景気が回復したことで多少は上向いたのかもしれません。現在在籍している企業のエンジニアの単価はメーカーと一次で取引した場合に80万円です。
そこから海外の外国人スタッフを利用してさらに利益率を上げます。
前社の企業は自分たちで意識することはありませんが、外国人プログラマーたちと仕事を取り合っている関係にあります。その結果、日本人エンジニアの相場の半分程度である金額でしか仕事を受けることができません、彼らは外国人エンジニアよりも質が高く、日本にあった仕事のアウトプットをしてくれます、しかしそこに付加価値は下がり続ける傾向にあります。
中途半端に英語とプログラムを学ぶと貧乏になる?
最近、これからは英語とプログラム、というワードで積極的に留学を促す広告を目にする機会が増えました。
理由は簡単で、あまりにも日本のプログラマーの価値が下がり続けたために、ここ数年でエンジニアになりたい学生が激減したからです。企業はお金を払ってでも学生を取得するほど需給関係が逆転しています。
3か月間、英語とプログラムをみっちり学習して、プログラマーで採用されたという成功談が華々しく掲載されていますが、実際には高額なプログラムコースに余計なお金を払わなくてもだれもが簡単にプログラママーの職に就くことができます。単純に業界に人が足りていないからです。
これは留学を促す企業と、エンジニアを採用した側にとって優れたビジネスですが、このプログラムコースを受けてエンジニアになる人にはあまり良い選択とはいえません。
3か月間必死に勉強しただけでは、英語なんてたいしてかわらないし、プログラムも基礎知識にも毛がついた程度です。わざわざ海外まで移動して、プール付きの宿泊施設に住んでまで、値段にあった成果が得られるかというと疑問です。
人工知能に仕事が奪われても気付かない人たち
少し話が逸れてしまいましたが、IT開発の現場では多くの日本人エンジニアの仕事が間接的に外国人エンジニアに奪われるようになりました。他の職種に比べて国境の壁を越えて最も重力が働きやすい業界です。すでにプロフェッショナルな地位を確立している人にとっては、給料は下がりにくいですが、中途半端なスキルしかないとどこまでも収入は下がり続けます。
こういう現場を直接目にしてIT業界を歩いてきたので、人口知能によって仕事を奪われるという未来もリアルに想像できます。
うまく人工知能を利用できる側に立てればいいのですが、そのポジションに付けるのは少数です。その他の労働者の給料は下がり続けるか、職を失うことになります。たとえ人員削減によるリストラを避けることができたとしても、給料が下がり続けると生活が苦しくなるため労働者の数が減っていきます。
こうした仕組みで面白いのは、末端で働く労働者にはたとえ当事者であるにも関わらず自分がいる景色が客観的に見えていないことにあります。彼らはなぜ自分の給料が安いかをよく理解していません。
1社目の会社にいたときに、やはりプログラマーの給料が安いことに疑問を持ちましたが、なぜかということを考える人は周りには少ないです。
今の会社に移動して、外国人スタッフを使うことが当たり前になっているので、どうして自分たちの給料は周りの相場に比べて高いのかを理解している人も少ないです。さらに面白いことに、コスト削減をするために海外の外国人スタッフを利用していますが、かれらがいくら貰っているかも知らずに、作業をしている労働者がたくさんいます。
こうした状況をみて、人工知能に仕事を奪われるであろう多くの人たちは、仕事が奪われるているということも知らない間に自然と消えていくんだろう、利用する側もどれくらいの付加価値を生んでいるのかもわからないんだろうな、ということを思いました。
おそらく人工知能の方は、単価の安い外国人スタッフよりも急激に先進国から仕事を奪うことになるだろうとは思いますが。
人口知能が主役になる時代でできる最良の手は、人工知能を開発する企業に投資することです。
2017年は人口知能元年になるかもしれません
ワトソンのIBM